241025 – 241026 : 断片的な

日記

電車に乗り込むなり鞄を誰もいない座席へと放り投げ、スキップをしながらその後を追う青年がいた。
収まりの悪い鞄が地面へと落下しそうになる。それに構わずにはいられなかった。私は冷めていたのだろうか。

電車の音が私の声をかき消す。相手のうなずきを見て届いているかどうか確かめるしかない。でもそれは聞こえているふりをしているだけなのかもしれない。

予約を取っていなかったからどこにも入られず、仕方なく入ったカレー屋はしょっぱかった。相手がどう思っているのか不安でならなかった。

無自覚なメンヘラ製造機はこないだまたやってしまったのだと悔いた。思い出した弾みに震えだしたては止まらないようで、困惑しつつ笑っていた。私は手元のホットコーヒーを相手の手元にやった。温めても収まらないようだったから、私は少しためらって左手を差し出した。捕むその手はほのかに汗ばんでいた。しばらくして手を離した後も、さっきまでミルクの入っていたグラスを持つ手は震えていた。

私が奴の話をし始めると、相手は髪に指を絡めはじめた。そわそわと落ち着かないのだと、触らずにはいられないのだとそういった。

少しからいのか、唇の上に鼻の頭に汗の玉が小さく浮いていた。同じものを食べている私もそうなのかもしれないと不安になり、同じ場所をあわてて指でぬぐった。油の付いた指はぬるりと光を弾いていた。

話している。相手の目が突如私の右斜め後ろに向く。反射的に私が振り向くと、別になにもないのだと教えてくれた。なぜそこを眼差したのか、相手自身わかっていないようだった。

期日前投票の会場で私の前にいたのはバギーを押す親だった。机が揺れるのを感じつつ投票用紙に鉛筆で文字を乗せているとき、子どもの声が聞こえた。私にも理解できる言葉を発していたが、何を言っていたかは忘れた。会場には先のバギーに乗っていた子以外にも子どもがいたのだろうか。見た気もするが、もう覚えていない。私の投票所整理券を確認していたのが真ん中で髪を分けた眼鏡の中年だったことと、小選挙区の投票用紙を手渡してくれた人がやけににこにこしていたことは思い出せるのに。国民審査の紙はピンクだった気もするが、もう定かではない。

恋人に対して別れ際に口にした言葉がなぜお疲れだったのかは、私自身よくわかっていない。口にしてすぐ妙だと気づいた。変なの。

暗い廊下に影が伸びている。顔は見えないがこちらを見てしきりに尻尾を振っている。撫でて漏らされるのがいやなので、ごめんねと思いながら私は背を向けて私の部屋に入る。

淡い水色をしている曇り空を見て灰色だと思ってる私はきっと私に溺れている。

下に目を向けると横幅がどんどん狭まるは階段。振り替えると今度は1番上の段の幅が最も狭くなっている。

首と肩とがずっと痛んでいる。