250515:眼鏡のない日

日記

 大通りに向かって歩いている。街路樹の奥には大きめの木が立っていて、その足元には電灯がある。最も照らされているところは柔らかな黄緑で、光源から離れるにつれて深く暗くなっていく。窓から溢れている逆光のせいで、木の輪郭は建物の影と同化して判別がつかない。でも、それを今日確認することはできない。眼鏡をなくしてしまったから。

「左目の乱視は2、近視は1進みました。右目に追いついたと言えますね」

 銭湯あがりの体は、表面だけが緩やかに火照っている。それは微熱のようで、寝起きのようで、夢みたいな心地がする。

 ブレーキランプが、自転車のライトが、並ぶ街灯が、散らばりながら煌めいている。近づけば信号の緑は丸ひとつだけれど、乱れる私の目には花火のように映っている。

 一台の自動車が私の横を駆け抜けていった。細長い三角形をしていた赤いランプは今、ぼんやりと重なる円形をしている。