腹が減っていた。バイト先から寮に戻ったときにはすでに朝食が売り切れてしまっていたのだ。
耳鼻科に向かう道中にはカレーパン屋があった。診察が終わった後まで売り切れていてくれるなよという心配は杞憂で、カレーパンたちはちゃんといてくれた。二百円と引き換えに手にしたそれの写真を撮ろうかとも思ったが、空腹に負けた。早く食べたかった。
かぶりつくとサクサクとした衣にもちもちとした生地が続く。鮮やかな黄色をした断面にときめく。
まだ中心部には遠い。ルーは息を潜めている。でも注意深く待ち続けられる訳もなく、忘れた頃にガツンと口に飛び込んできた。
「うんま」
声は漏れていた。口の周りはカレーでベトベトだ。手の甲で拭ったとき、そういえば今日はおろしたての白シャツを着ていたのだと思い出し、途端にスリリングになった。