携帯電話が鳴る。待望の眼鏡ができたとの報であった。
日差しはあまりにも強いからとっとと涼しい眼鏡屋に入りたいのだが、なんせ遠い。マップによると歩きで五十分かかるらしいが、しかしバスに乗るのも負けた気がする。だから早歩きにもなる。
道中には公園を持った集合住宅があった。私が一定の速度で歩き続けるのに合わせて、等間隔に置かれた柱や窓が右から左へと移動していく。柱で区切られた空間は、一つ一つ異なっている。公園、駐輪場、物置……。ころころと移る場面は星野源のSUNのようで面白かった。
店内は涼しい。
「試してみてください」
新品の眼鏡と共にピカピカの鏡が差し出される。かけてびっくり、肌荒れがひどい。目が悪い方が幸せなこともあるなと、少し悲しかった。