250407:扉

日記

寮での生活も4年目だが、今日は居室に扉がついた記念日となった。つまるところは居室と廊下を分つものが薄っぺらいのれんから重たい木の板になったわけで、住環境に凄まじい変化が生じたわけだ。きっかけは扉を外した先代住人群の最後の1人が退寮し、新たに学部の一回生を迎えたこと。もはや古い状態を維持する理由はどこにもなかった。

つけてみて何に驚いたって、その遮音性である。扉を閉めるとあら不思議、廊下の音がかなりカットされて一気に「部屋」感が出る。これまではあらゆる音が筒抜けだった。人の靴が廊下を叩く様子も、居室前の炊事場における会話も、洗濯機が脱水を始めたことも、全て伝わってきたし、逆に部屋でのあらゆる挙動もきっと外に漏れていた。

とはいえ扉のない生活にも快適な点はあった。開閉音によって部屋の出入りで同居人にストレスをかけることはなく、ちょっとした忘れものを取りに戻るのも楽で、外の会話を聞きつけてイベントに飛び込むことも容易かった。でもまあその程度と言ってしまえばその程度の話だ。

部屋の間取りも変わった。これまでは私が廊下側で同居人は反対側だったから、どれだけ私が外に出ようがその動きが相手にストレスを与えることはなかった。しかし、それが逆となった今はそうもいかない。視界の中で他者がうろうろとしていたら落ち着かないだろう。廊下への出入りを減らすことは扉の開閉回数を減らすことと等しい。これを契機に生活スタイルを変えていけと言われているようなものだ。ちょうどいい。

扉を取り付けた部屋の前を通りがかった友人に、一つの時代が終わったよと冗談めかしたことを言うと、前の姿を記念に撮っておいたかと尋ねられた。全くその発想に至らなかった自分に驚き、その辺への配慮が欠けてることに気づいた。そんなわけで物的な記録がないから「扉のなかった部屋」の証人は数年経てばいなくなる。その入れ替わりの激しさは寂しくもあるけれど、この空間が学生寮であることを思うと健全なことなのだとも思う。