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その他

『リアリティのダンス』(A. ホドロフスキー)

少年は踊った。商人である父を言いくるめてマネキンから奪い取った、新品の赤い靴を履いて。ドアを開けて街へ繰り出し、灰色の階段を身を捩って駆けた。親の叱責も同級生の嘲笑も忘れ、顔に満面の喜びを湛えて。 女は踊った。悪夢にうなされる息子の手を取っ...
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映画『A』を観て

なかなか大変な映画だった。この作品『A』1は、地下鉄サリン事件後のオウム真理教に密着したドキュメンタリーなのだが、内容に対して思考がぐるぐるしてしまったのに加えてカメラワークに酔ってしまって、半分を過ぎたあたりからずっと吐き気を堪えて見てい...
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『黄金探索者』(ル・クレジオ)

荒波に揉まれながら舵を切る高揚を、六分儀で緯度や軽度を測る方法を初めて知る興奮を、私は知らない。目的地に運んでくれる安心安全な交通機関に揺られて、現在地はGPSが教えてくれる。私はこの時代だから生き残ることができているタイプの人間だろうから...
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『恋愛制度、束縛の2500年史-古代ギリシャ・ローマから現代日本まで』

恋愛のことで凹んでいた日に手に取った本。この5月に名大出版から出たハルワニの哲学書を読む予定があり、関連本として挙げられていたので読んでみようかとなった。古代ギリシアの恋愛は、もともと一つであった者同士が片割れを強く求める形で現れる。プラト...
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『社会学はどこから来てどこへ行くのか』を読んで

責任の所在という問題について。(76 ~ 79頁)私は「共同体意識の中に存在する個人」という構図で、自治空間において発生する責任感との距離感をいかにして取るかというテーマの小論を書いた。ある先輩や加藤典洋は日本の戦後責任を非当事者世代がいか...
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『一億総ガキ時代 : 「成熟拒否」という病』

本書は、引きこもり、モンスターペアレント、依存症などの問題が生じてしまう社会的・精神的なメカニズムについて、精神科医である著者が解説する本である。内容を私なりに要約すると以下のようなものになる。自分が抱えている自己愛や全能感といったものは、...