いつからか覚えていないが、ここしばらくの間、自転車に乗ると2秒に3回くらい「ガクン」と体が跳ねる感じを味わい続けていた。一時は舌を噛んでしまうくらいに激しく揺れるほどで、寮の隣人に助けてもらいつつ慣れない手つきで空気を入れたら多少ましにはなったものの、結局のところかすかな震えは治らなかった。
今朝、大学に向かう途中も愛車は相変わらず周期的な振動を繰り返していたのだが、今回はそれに加えて、いやに地べたの感触が体に響くのを感じた。大学に到着し、恐る恐るタイヤに触れてみると救いようがないほどに空気が抜けている。本格的なパンクだ。金がないからと渋っていたが、いよいよ自転車屋に持っていく決意を固めねばならなかった。
用事が済んだので自転車屋に向かった。正確には把握していないが、口座の残高はすでに10,000円を切っている。見積もりの額次第では給料日を待たなければならない。果たしてどうなるだろうかとそわそわしつつ店員さんに声をかける。どうやらタイヤの金属部分にもひびが入ってしまっているらしく、丸ごと交換した方がいいとのこと。ゴム部分のみの交換では済まないようだ。緊張が走る。
「そうですか……。おいくらくらいになりますか?」
「5,000円くらいですね」
胸を撫で下ろした。よかった、その金額であれば払える。それではよろしくお願いしますと店を後にし、少し離れた場所で念の為に三井住友のアプリを開く。残高、7,278円。安堵と悲しさとがないまぜになりながら寮へと歩いた。
2時間ほどして回収に向かう。礼を言って自転車にまたがる。ここのところ大学に行くのが億劫だった理由の半分くらいを自転車の不快な乗り心地が負っていると踏んでいたので、これで解消されるのではないかと期待してペダルを漕ぐ。……揺れないことは揺れないのでマイナスがゼロになっているのは確かなのだが、笑みが溢れるほどの乗り心地に大変身したわけではなかった。まあそんなもんだよなあと思いつつ、図書館へと向かった。